プロジェクトはRPGである
Posted: 3 years ago

逆である。RPGこそが魔王討伐や世界平和を目的としたプロジェクトである。これがゲームというフォーマットに収まることで、プロジェクトをどう扱うべきか端的に説明される。ほとんどの場合、プロジェクトリーダーはRPGでいうところのプレイヤである。どちらに進むのか、戦うか逃げるか、そういった方針をゲームの外から決めるのが役割だ。

ここでいうプロジェクトリーダーは、一般的にはプロジェクトマネージャーの業務も含んでいるかも知れない。しかし、プロジェクトのメンバの立場から見れば、人が1人か2人か、「リーダーとマネージャーで決めてくれよ」という愚痴が増えるぐらいのことでしかない。

リーダーはリーダーとして振る舞うべきである

ある議題について、自らの持つ思想に関係なく肯定または否定の立場に立ち、意見を述べあう競技ディベートのように、リーダーは理想的なリーダーがどのように思考するかを念頭におき、発言、行動するべきだ。個人的な意見ばかりを述べ、会議を発散させ、なんの結論も出さないまま場当たり的に対処したり、他のメンバに丸投げするリーダーはリーダーとは言えない。リーダーとして意見をまとめ、プロジェクトが進むべき道を示さなければならない。何も心配はいらない。結果として問題が発生しても、もう一度議論し、やり直せば済む。どうすれば失敗するか、メンバ全員が学習することができた。それだけでプロジェクトは価値あるものになる。

理想的なリーダーの意見と自らの個人的な意見が対立したのなら、「リーダーとしてはこう思う。しかし個人的にはそう思わない」と言えばいい。そのあと「そうは言っても、プロジェクトとしてはこうするのが最良であると判断する。だからこうしよう」と続けるのだ。仮に、メンバに負担を強いることになったとしても理解してくれうだろう。結論だけ伝えていたのでは、厳しいリーダーだというイメージを持たれ不信感が増すばかりだ。もっと心の内を伝え、メンバの理解を得ることが必要である。

議論に必要なのは、一人では考えつかない多種多様な意見だ。メンバは、ある程度好き勝手に発言していいかも知れない。周りの意見に同調し、透明になってはいけない。

リーダーはタスク間の調整をするべきである

それぞれのタスクが異なるポリシーで実行されれば、一貫性のないプロジェクトになってしまう。そうならないよう、リーダーは各タスクの内容を理解し、各担当者が何を考えているかを把握しなければならない。また、それぞれのタスクの担当者が自身のタスクに集中できる環境を作るべきだし、それによってタスクが、ひいてはプロジェクトが滞りなく完了し、そしてはじめてリーダーとして責務を全うしたと言える。

あるタスクで問題が発生し、そのタスクにとって総合的に等価値な解決策が複数ある時、リーダーはそれぞれの解決策がその他のタスクに影響しないかを評価すべきである。そのタスクの担当者にとって、他のタスクが破綻しようがどうだっていいが、他のタスクの担当者は自身のタスクに影響がないことを強く望む。他のタスクに影響がありそうなとき「それぞれの担当者で話し合って決めてくれ」と丸投げしてしまうと、それぞれの担当者がお互いのタスクを理解するという無駄な作業が発生してしまう。円満に解決すれば良いが、仲違いしてしまった時に仲裁に入るのはリーダーの役目だ。それなら最初からリーダーが判断した方が早いし確実ではないだろうか。

勇者と魔法使いが敵Aを攻撃するとオーバーキルになってしまうが、忍者一人で敵Bは重荷だ。そんな時、勇者は敵Bを、魔法使いと忍者で敵Aを・・・と、メンバの能力に応じてタスクを割り振るのがプレイヤだ。勇者はそこまでの意思を持たない。

リーダーはステークホルダとのやり取りを担うべきである

ステークホルダが質問があると言ってきた時、関係するタスクの担当者を差し出してはならない。なぜなら、ステークホルダが気にしているのはプロジェクトが提供するソリューションであり、たまたま目についた箇所に疑問を持ったに過ぎないからだ。理解が深まるほど、関心はその他のタスクにまで及ぶ。そして、やってきた担当者が他のタスクに関する質問に答えられなかった時、タスク間の連携がうまくいっていないという印象を与え、それはプロジェクトに対する不信感へと変わる。行き着く先は、プロジェクトの中止やリーダーの解任である。

また逆に、あるタスクの担当者がその進め方について、ステークホルダの意向を確認したいと言い出したときも、担当者一人で行かせるべきではない。リーダー自身がそれを把握できていなかったことを反省して、リーダー自身が話をしに行くべきだ。なぜなら、先述した通り、ステークホルダが見ているのはプロジェクトの全体像だ。質問へ回答するには、他のタスクがどうなっているかを把握する必要があり、そのための質問が出てくる。そして破局を迎える。

ステークホルダである王は、姫を救ってくれさえすればいい。そのために、勇者がどのように努力し、どれほどの力で剣を振り下ろすかなどどうでもいい。暴力ではなく交渉で解決した方が平和的だが、そこまで考えちゃあいない。それにバッドエンドもゲームの魅力の一つだが、主時間はセーブ不能で、リーダーやプロジェクトに対する評価を取り消して最初からやり直すことはできない。

メンバはどう振る舞うべきか

今、メンバとしてプロジェクトに参加しているとして、一生そのままでいいのか。昇進、またはそれに付随する昇給は本懐ではないのか。評価されるのは、歴史に名を刻むのはリーダーだ。それを目指さないのか。

ある日突然リーダーに任命されるのは稀だ。多くの場合、リーダーになる素質がある者が、その可能性を見出される。そう信じたい。理想的なリーダーとは何か、常に考え続け、行動しなければならない。

余談

リーダーの責任が重いように思われるが、それを選択したのはリーダー自身ではないのか。リーダーとなり給与も変わったとき、その意味をもっと深く考えるべきだった。より関係の深いステークホルダにプロジェクトへ参画してもらい、プロジェクトオーナーという役割を与えスクラムを組まなかったことを反省すべきだ。これらの逆を選択するなどしてメンバを引っ張っていく、それこそがリーディングでありリーダーの役割ではないだろうか。給料分働いてくれ。

完璧なリーダーやプロジェクトばかりでないことは明らかだ。そんなプロジェクトのメンバーになってしまった場合、リーダーを理想的なリーダーへ近づけるようコントロールすることが可能だと考える。リーダーを信頼している素振りを見せ、思い切り頼っていく。リーダーは「しょうがないやつだな」と思いながら、それなりに動いてくれるかも知れない。メンバとして参画したプロジェクトが失敗しても軽傷で済むが、リーダーであればただごとでは済まない。日頃から理想的なリーダーとは何かを考察し続けることで、いざ自分がリーダーになったとき、慌てずにロールプレイングできるはずだ。そう思って私はこの文章を書いた。